「新・将棋論考」その4~渡辺はなぜ聡太君に勝てないのか?~

馬力(読みの深さ)の違いが大きい。PART4

自動車の馬力に譬える。
馬力とは、将棋で言うと「読みの深さ」。

渡辺を含めトップクラスは、350馬力と仮定すると、
Aクラスの棋士は300馬力。
Bクラスの棋士が250馬力。四五段の棋士が200馬力。
トップ棋士同士だと、自分が難しいと判断した局面は、相手も難しいと感じる。
この局面が重要な分岐点だと感じれば、それは相手も同じ。

Bクラス以下の棋士が相手の場合、先行されても、アクセルを踏めば追いつく。
だから、危険が目の前に迫ってから、対処しても大抵間に合う。

偶(たま)に取りこぼしがあって負かされることもあるが、確率の問題。10回のうち3回も無い。7回は勝てる。

ところが、ここにトンデモナイ棋士が現れた。藤井聡太。

前述の通り、今までのトップ棋士が350馬力だったのだが、聡太君は、500馬力ぐらいある。

聡太君は、対戦相手に関係なく、徹底的に将棋の真理を追究するタイプ。

並みの棋士がこれを目指しても非効率だったので、渡辺は、勝てた。

しかし、500馬力の聡太君は、その非効率を乗り越えてしまう。

最も顕著なのが、終盤戦。

寄せがあるかどうか読む。

有力な寄せ筋が、どれも「詰むや詰まざるや」でとても読み切れない。

自分が読み切れないなら、350馬力の相手も読み切れない。

ならば、相手が寄せに出て来てから、その時にあらためて検討すりゃ良い、と、考えてた。

そして、殆ど、間に合った。

ところが、聡太君には間に合わない。

聡太君が寄せに出てきたら、もうお終い。
手遅れ!
寄せられてしまう!

その上、大概の棋士は終盤で一度は間違えるのに、彼は間違えない。

今まで効率で手を選んで来たが、これが通用しなくなった。
早い段階から、寄せがあるかどうか、検討しなければならなくなった。
こんなこと、二十年以上やって来なかった。経験がない。

これが350馬力の棋士と500馬力の棋士の違い。

〔この見解は『将棋の渡辺くん』その7を参考にしました。〕

と、言う理由(わけ)で。

聡太君に対しては、序盤中盤で大きくリードを奪わなければ、勝てない。

 

<「その5」に続く>