特集:注目の棋士「佐々木大地 七段」
「令和の村山聖」こと佐々木大地
本日から、第94期 棋聖戦 五番勝負の第1局が始まる。
今回の注目の棋士は、その挑戦者、佐々木大地七段。
7月から始まる第64期 王位戦の挑戦権も獲得し、聡太君と十二番勝負を戦う。
佐々木を語るに欠かせないのが、病気と闘いながら棋士と成ったことだ。
彼は、9歳のときに拡張型心筋症を発症し、一時は酸素ボンベをつけながら小学校に通うほどの状態だった。
師匠・深浦康市九段は、そんな時期、鼻チューブをしていた佐々木と出会い、弟子の申し出を受けた。
この様な状態で過酷な奨励会を戦い抜けるだろうか。
師匠として、四段(棋士)になれないと分っていて弟子に採るのは辛い。
しかし、本人の強い意志を尊重した。
ところが、奨励会入った佐々木は、メキメキ腕を上げ、昇級した。
そして、なんと、病気も、見る見る快方に向い、現在では、ほぼ完治したと言う。
好きな将棋を強くなりたい!その為には、健康でなければ!
その強い思い、情熱が病を克服したのだ。
担当医師が、信じられない、と驚くほどだった。
今回、佐々木は、棋聖戦と王位戦の挑戦者となった。
恐らく師匠の深浦康市九段の喜びは御両親に勝るとも劣らないだろう。
将(まさ)しく佐々木大地は、「令和の村山聖」だ。(註1)
これを聞くと、聡太君ファンである私だが、佐々木も応援したくなる。
今第64期 王位戦の白組リーグで、渡辺明名人(当時)も倒し5戦全勝。
挑戦者決定戦では紅組優勝の羽生善治九段を破って挑戦権獲得したのだ。
驚くのは、なんと第59期から6年連続リーグ入りし、悲願を達成したことである。
王位は、師匠・深浦康市九段が唯一獲得したタイトルだった。
佐々木はきっと師匠への恩返しの為に、この王位戦に拘ったのだろう。
ところで、佐々木は、プロ棋士のだれもが認める若手強豪の一人なのだが、棋界七不思議の一人でもあります(笑)(註2)
棋界七不思議の一人
佐々木大地七段は、平成7年(1995年)5月30日生、28歳。
平成28年(2016年)4月四段昇段。
四段昇段以来、通算成績は7割を超えており、間違いなく強いのだが、どういう訳か順位戦に白星が集まらない。
後輩が次々と昇級していく中、彼だけがC級2組に取り残されている。これが棋界七不思議の一人の所以である。
佐々木は、現在、順位戦C級2組だが、本来ならB級2組だろう。
竜王戦は今期4組だが、本来なら3組が妥当なところだ。
彼のC級2組のリーグ成績を見ると、6期中、あと一つ、黒星を減らしていたら昇級できたことが4度あり、悔やまれる。
黒星の相手が同じ若手俊英なら仕方ない。しかし、言っちゃあ悪いが、薹の立った棋士に負けているのは、ちょっと・・・

薹(とう)の立(た)った。
意味:全盛期が過ぎた。
しかし、佐々木は、順位戦で昇級できないことを余り気に病んでいない節がある。
順位戦より王位戦の方を重視していた、と思われるのだ。
だが、今期(第82期)順位戦こそ、昇級して欲しいものだ。
佐々木大地七段の八大タイトル各棋戦の成績
順位戦
第58回三段リーグで2度目の次点で四段昇段、フリークラスからの出発となった。
第76期 順位戦からC級2組に上がり、8勝2敗、結果6位。
第77期、8勝2敗、結果4位。次点。頭刎ね
第78期、8勝2敗、結果4位。9勝なら昇級
第79期、7勝3敗、結果6位。8勝なら昇級
第80期、7勝3敗、結果10位。
第81期、8勝2敗、結果4位。9勝なら昇級
竜王戦
第30期6組から出場、2回戦敗退。
第31期、1回戦敗退。
第32期、3回戦敗退。
第33期、3回戦敗退。
第34期、4回戦準決勝敗退するも昇級者決定戦で3位獲得して5組へ昇級。
第35期5組、優勝して4組へ昇級。
叡王戦
第2期は、初参加で四段戦優勝。
第5期 五段戦優勝、本戦でもベスト4まで勝ち進んだ。
第6期は、本戦シードで前期同様ベスト4まで勝ち進んだ。
第7期は、本戦シードながら1回戦で敗れた。
(記載のない期は段位戦優勝未満で敗退)
王座戦
第67期は、一次予選から二次予選を突破。挑戦者決定トーナメント1回戦で藤井聡太七段(当時)に勝ったが2回戦で羽生九段に敗れた。
(記載のない期は一次予選で敗退)
棋王戦
第43期は、予選突破、挑戦者決定トーナメント2回戦に勝ってベスト16に残った。
第45期では、予選突破、挑戦者決定トーナメントでなんとベスト4に残り敗者復活側ながら、挑戦者決定変則二番勝負まで行ったが、惜しくも本田奎四段に敗れ、挑戦権を逃した。
第46期は、挑戦者決定トーナメントのシードながら、3回戦で敗退。
(記載のない期は予選で敗退)
王将戦
第70期と第72期に一次予選を突破したが、二次予選で敗退。
(記載のない期は一次予選で敗退)
棋聖戦
第90期に一次予選を突破したが、二次予選で敗退。
第93期に一次予選、二次予選と突破し、決勝トーナメントでベスト4まで進んだが、準決勝で永瀬拓矢王座に敗れた。
第94期の決勝トーナメント、準決勝で渡辺明名人(当時)、決勝で永瀬拓矢王座に勝ち、見事、挑戦権を得た。
(記載のない期は一次予選で敗退)
佐々木大地七段の年度別成績
年度 対局数 勝数 敗数 勝率 表彰など
2016年 35 25 10 0.7142
2017年 56 36 20 0.6428
2018年 59 46 13 0.7796 最多勝利賞
2019年 67 45 22 0.6716 最多対局賞
2020年 52 37 15 0.7115
2021年 48 34 14 0.7083
2022年 46 32 14 0.6956
通算成績 363局255勝108敗 0.7025
以上、令和5年(2023年)6月4日時点の成績です。
豊島将之九段、初の振飛車戦法!
なんと!なんと!居飛車一刀流の豊島九段が、飛車を振った!!
この真意は何か?
簡単ですね。
言わずと知れた藤井聡太七冠への対策です!はい!
先日の叡王戦で菅井八段が、大いに健闘していたのを見て、藤井の牙城を突破する戦法の一つとして大いに有効であろう、と判断したのだ。
面白いじゃあありませんか。
どんどん斬新な戦法・戦術で挑戦して欲しいものですね。
楽しみ!楽しみ!
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【対局ニュース】
第71期 王座戦 挑戦者決定トーナメント
▲豊島将之九段 vs △本田奎六段
場所:関西将棋会館「御下段の間」
持時間:各5時間(チェスクロック方式)
開始時刻:10時
終了時刻:20時44分
結果:105手で先手・豊島九段の勝ち。
註解
註1.村山聖
ドキュメンタリー『聖の青春』で有名な村山聖は、難病と闘いながらA級昇級まで果たした棋士。
同世代の羽生善治を倒して名人に成ることが夢だったが、癌が発症。
志半ば享年29歳の若さでこの世を去った。
註2.棋界七不思議の一人
「棋界七不思議の一人」には、歴とした定義は無い。
「七不思議の一人」と言うからには、七人居るのか、と言うとそうではない。
将棋界で昔から実力の割に理屈に合わないことをそう呼ぶ。
例えば、実力の割に順位戦のクラスが低い棋士や、実力的にタイトルの一つも取っていて不思議じゃない棋士、統計上から言えばタイトル挑戦していても不思議じゃない棋士などを指して「七不思議」と呼ぶ。
七不思議の他の棋士は、渡辺明名人、八代弥七段、本田奎六段など。
既に卒業したが、屋敷伸之九段、山崎隆之八段、中村太地八段もそのメンバーだった。3人共にA級昇級して卒業した。
渡辺明名人は、今でこそ名人だが、第69期(2010年度)にA級へ昇級してから、第76期(2017年度)に降級するまで、8年間、名人に挑戦すらしていなかった。
また、七大タイトルの内、王位だけは挑戦すらしたことがない。実力から考えれば不思議だ。第48期(2007年度)白組で優勝、第53期(2012年度)紅組で優勝したものの、いずれも挑戦者決定戦で敗れている。