棋士の本分
棋士の本分は、将棋が強くなることであり、名人を目標とすることだった。
しかし、AI(将棋ソフト)の時代は、将棋の面白さをファンに伝えることも、今後、大きな比重を占める。
則ち、前者と後者は車の両輪となった。(参照:「棋士の存在意義」)
将棋の面白さを伝える方法の一つが、大盤解説である。
大盤解説の必要性を漢文の理解に譬える
藤井聡太六冠が脚光を浴び、将棋ファンが激増した今、大盤解説は非常に大切である。
それは、譬えば、漢文の理解に似ている。
我々素人は、漢文の「白文」を渡されても、チンプンカンプンである。
「現代口語文」に直して、漸く「意味」が解る。
この意味と言うのは、字面の、表面上の意味であって、
作者の「真意」ではない。
真意は、作者の生立ち、交友関係、社会的立場、境遇、性格、作風、そして、時代背景などなど、様々な要素から洞察して汲み取る。
そして、必ずしも、字面通りに素直に解釈できない場合が多い。
我々は、この真意を知って、初めて面白く感じる。
真意と言うより、「物語」「ドラマ」と言った方が適切だろうか。
だから、隠された真意を解読し、物語をしてくれる訳者を求める。
話を将棋に戻す。
もし、テレビ画面に将棋盤だけ映っていても、我々ファンは5分と観ていられない。
それは、漢文の白文を渡されたのと同じ。
解説者が指し手を説明してくれて、初めて意味を理解する。
この指し手の説明が、漢文の「現代口語文」に相当する。
AI(将棋ソフト)が登場する以前、解説者は、ここ迄で用足りた。
我々ファンの興味は、次の「真意」である。
すなわち、「真意」を表現する「物語」「ドラマ」が必要なのである。
結論
AI(将棋ソフト)が強くなった時代の大盤解説は、何が重要か?
解説者の棋士は、①指し手の意味を説明し、②次の候補手を挙げ、③形勢判断を示す。
しかし、今や、この3つの内の2つ、
「②次の候補手を挙げる」
「③形勢判断(評価値)を示す」
は、AI(将棋ソフト)が十二分にやってくれる。
残る1つ
「①指し手の意味を説明する」
が、人間にしか出来ない芸当である。
「指し手の意味」とは、変化手順などを含めた表面上の理由だけではなく、前項で説明した漢文の「真意」に相当する。
すなわち、「真意」を表現する「物語」「ドラマ」が必要なのである。
この「物語」を作る為には、教養を身に着け、話術を磨かなければならない。
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【ai時代の大盤解説シリーズ】
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