佐々木大地の妖刀の終盤術!タイトル戦初勝利!
棋聖戦 第2局、佐々木七段、終盤で再逆転して勝ちましたね~
佐々木だからこそ終盤で再逆転勝ちした!
他の棋士では、あっさり負けていた。
と、思います。
私は、聡太君の大ファンですが、佐々木大地がタイトルを奪取するようなことが起っても、ちっとも落胆しません。
聡太君にとっては、良いハードルなんじゃあないでしょうか。
数年前、豊島九段に6連敗して、後に乗り越えたのと同じで、寧ろ、楽しみ。

寧(むし)ろ
今回の佐々木の戦型選択は、得意の「相掛り」。
解説の山崎隆之八段は、「佐々木七段の相掛りは真似できない。少しづつ毎回違う。」
「だから、相手は対策の立てようがない。」と説明していました。
案の定、聡太君も序盤から時間を使わされて、終盤の入口で1時間差がついた。
それでいて、形勢は若干、佐々木有利。
ここまで耐えられたのは、聡太君だから。
他の棋士なら、もっと差が開いている。
その後は手探りの局面が続いて、佐々木も長考。
しかし、指し難い最善手を重ねて、勝勢を築いた。
こりゃ、佐々木の完勝だ、と、誰もが思った。
ところが、手拍子に打った73手目▲4八歩が疑問手!
一瞬で形勢は逆転!
将棋は怖い!
ところが、ところが・・・
99手目佐々木の▲2五桂が、まるで「形作り」に見えるぼんやりした手。(註1)
解説者も聡太君も、そう思った。
これが罠だった。
聡太君でさえ見破れなかった。
103手目▲5五角が、相手の銀の利きに打つ渾身の勝負手。
これが再逆転に繋がって、佐々木勝利!
なんと、竜王・名人を終盤逆転して勝つなんて!
絶句!!
聡太君相手に、渡辺明九段(前名人)でさえ、逆転勝ちは、24局中1局しかない。
しかも、その逆転勝ちは、聡太君の秒読みに追われてのミス。
今回の佐々木の逆転勝ちは、佐々木の積極的能動的、勝負手が実ったもの。
意味が違います。
それでいて、その雰囲気を醸し出さないところが、独特です。
普通、勝負手は、勝負手だと言う雰囲気、オーラを放っています。
羽生九段の「羽生マジック」なんかがその典型ですね。
相手も褌を絞め直す。

褌(ふんどし)
気合が入る。
しかし、今回の佐々木の勝負手は、そんなオーラを感じさせない。
「妖刀の終盤術」じゃあないでしょうか。
それにしても、佐々木大地の不思議な終盤力を見せられましたね~。
底力を見ました。
流石、二棋戦同時挑戦者に成って、毎年高勝率を上げる筈だ。
好調の羽生善治九段を下し、渡辺明名人(当時)に二度勝ち、永瀬拓矢王座を破った理由(わけ)だ。
納得です。
これからの棋聖戦、王位戦は、相当白熱します。
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【対局ニュース】
第94期 ヒューリック杯棋聖戦 五番勝負 第2局
△藤井聡太棋聖(名人・竜王・王位・王将・叡王・棋王)vs ▲挑戦者・佐々木大地七段
対局日:令和5年(2023年)6月23日(金)
場所:兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」
持時間:各4時間(ストップウォッチ方式)
開始時刻:9時
終了時刻:19時20分
結果:111手で先手・佐々木七段の勝ち。
五番勝負シリーズの成績は、藤井1勝、佐々木1勝。
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【プロフィール】2023年6月23日現在
佐々木大地(ささき だいち)七段
生年月日:平成7年(1995年)5月30日生、現28歳
出身地:長崎県対馬市
師匠:深浦康市九段
竜王戦:4組
順位戦:C級2組
四段昇段:平成28年(2016年)4月1日、20歳。
七段昇段:令和4年(2022年)4月28日。
棋戦優勝など:なし。
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【註解】
註1.形作り
将棋の最終盤で、もう勝ちが無く、このままだと大差で惨めな局面になるところを、相手の玉に詰めろ掛けて、自玉は簡単な詰みの局面にして、恰も一手差で敗れたような形(局面)にして貰うこと。これには相手の暗黙の協力が必要で、プロ同士だと空気で解る。
この逆が「形も作れなかった」と表現される。対戦相手が協力してくれず、駒をどんどん取られ、刃折れ矢尽き、手も足も出ない局面にされること。投了しようにも、投了できない心境に追い込まれる。